第13章 日陰者
「ごっごめん、ちょっと用事思い出した!
先帰ってるね、ごめん!!!」
その正体を確かめなければ───────
そんな思いに駆られ、その場を走って離れた。
上鳴はポカンと口を開けていたが、構っている暇はない。
狙いは何か。
そもそも誰なのか。
───この前の奴らの残党?
───また別の奴?
───狙いは私?
注意深く辺りを見回していたところで、1階部分に見慣れた頭がまだ残っていたことに気付いた。
──緑谷?
黒いフードを被った者と一緒にいる。
友人だろうか。
しかし、緑谷の身体は固い。
黒フードの腕は緑谷の肩に回されているため、親しげに見えなくもないけれど。
でも、それにしてはその者の手首の曲がり方がおかしい。
緑谷の動きのぎこちなさにも再度違和感を抱き、終綴は人混みに紛れながらゆっくりと2人に近づいた。
「──────」
「────────」
「…────────」
「──────…」
聞こえない。
もう数メートル、近付いてみる。
「全部、オールマイトだ」
ようやく聞こえた言葉は、終綴の耳を冷たく震わせた。
再び距離を取って、黒フードの顔が見える位置まで移動してみる。
──オールマイト、ねぇ。
緑谷にとって、否、オールマイトにとってもだが、あの2人は互いが特別な存在のはず。
日頃見ていれば、嘘や隠し事を見抜くのが得意な終綴にとって、それを知るのは造作もないことだった。
2人とも隠そうとはしているのだが、苦手なのだろう。
しかし、だからこその珍妙さ。
あの緑谷が、オールマイトについて容易に他者と話すことがあるだろうか?
自分から何かの事件について話すなら別なのかもしれないが、この雰囲気ではそうは見えなかった。
──くそ、絶妙に顔が見えないな。
いっそのこと話しかけてみるか、と思ったところで麗日がこちらに歩いてきているのが見えた。
──任せよう。
自分はあまり、行動しない方が良い。
USJや路上での襲撃などで、それは身に染みていた。