第13章 日陰者
「上鳴、一緒にいい?
私も靴が欲しくてさ!」
覗き込みながら首を傾げると、上鳴はおぉ、と僅かに視線を逸らした。
頬が赤い。
そんなやり取りを見て、葉隠はおぉ…!と感激している。
───こいつも居たのか。
───親しいに越したことはないか、この子の個性も便利だし。
「よかった!じゃ、最初あそこ行こうよ!」
上鳴の袖の裾をつんつんと引っ張り、目当ての店を指さす。
行ったことのない店だった。
自分に普段必要な物は恋人や家族から買い与えられているし、そもそも家業以外での外出自体、あまりしないのだ。
街ではよく見かけるし、チェーン店なのはわかるが、それでも興味だけはあった。
上鳴たちにとっては見慣れているようで、黄色地に赤のロゴが入った店を見、2人は頷いた。
「お、これとかカッコよくね!?」
「おー、いいねー!!
終綴ちゃんはどれにするの?」
「…………これ?ってか、なんか軽…」
「「それメンズ物だから!」」
「え、…………………じゃあこれ」
「服は可愛いのに、靴はそんなにゴツイやつが好みなの…?」
「いや、てかレディース見ようぜ、な?」
「えー…うん、わかった~」
今まで自分が私服に合わせて履いてきた靴は、全て「ゴツイ」デザインだった。
今回もそのような物の方が都合がいいかもと選んだのに、と少し不満だ。
もっとも、彼女の履いてきた靴は爪先部分に鉄塊が仕込まれていたりと、このような量販店には売っていないものばかりだったのだが。
靴を持って、こんなに軽いのかと驚いていたその理由を同級生が知らないのは、幸か不幸か。
葉隠は可愛らしい靴を選び、そこでその店を出た。
そして、
「───────っ…」
じわり
気味の悪い気配を、終綴は全身で感じ取っていた。