第13章 日陰者
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よし、と。
全身鏡の前で服装をチェックし、OKサインを出す終綴。
アイスブルーの爽やかなブラウスに、白いショートパンツを合わせている。
ノースリーブにショートパンツなので、長い手脚が惜しげも無く晒されている。
露出は多いがしかし、筋肉で引き締まっているためか健康的な印象を受ける。
ショルダーバッグを肩にかけ、それからスマートフォンを片手に取った。
着信音が虚しく響く。
どうやら相手は現在出られない状況にあるようだ。
おかしいなと思いつつも、終綴はふわり、
姿を消した。
***
「ってな感じでやってきました!
県内最多店舗数を誇るナウでヤングな最先端!
木椰区ショッピングモール!」
「腕が6本のあなたにも!
ふくらはぎ激ゴツのあなたにも!
きっと見つかるオンリーワン!」
「個性の差による多様な形態を数でカバーするだけじゃないんだよね
ティーンからシニアまで幅広い世代にフィットするデザインが集まっているからこの集客力」
「幼児が怖がるぞ、よせ」
相変わらずの緑谷と、それを控えさせようとする常闇。
終綴はぼんやりと、今朝から連絡のつかない恋人のことを考えていた。
しかし、それも一旦中断させられる。
「お、アレ雄英生じゃん!?1年!?
体育祭ウェーイ!!」
「うおお、まだ覚えてる人いるんだあ…!」
見知らぬ若者たち───自分と同じ年くらいだろうか───が話しかけてきたのだ。
ち、と内心終綴は舌打ちをする。
目立ってはいけないのだ。
以前のことのようになる訳にはいかない。
今は1人ではないのだ。
人目にもつく。
───バラけなければ。
───と、なると…………上鳴とが良いかな。
「とりあえずウチ大きめのキャリーバッグ買わなきゃ」「あら、では一緒に回りましょうか」
「俺アウトドア系の靴ねぇから買いてえんだけど」
「あー私も私もーー!」
「ピッキング用の小型ドリルってどこ売ってんだ?」
峰田の相変わらずの言葉を軽蔑しながら、終綴はねぇ、と提案する。
「目的バラバラだしさ、時間決めて自由行動しようよ!
それで、後でまた集まってどこか行こう!」
皆そうだね!と頷き、思い思いに散らばっていった。
───これで良し、と。