第13章 日陰者
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「みんな…土産話っ、楽しみに…うう、してるっ……がら!」
テスト明け。
芦戸含め、実技テストをクリアできなかった者達は涙を流し嘆いていた。
────そんなに合宿って楽しいのかな…
終綴はぼんやりと思う。
どのような物なのか、知識としては知っているが、経験はない。
15年という短い人生の殆どが家族と一緒だったためか、彼ら以外と同じ屋根の下、ということを全く想像できないのだ。
「まっまだわかんないよ、どんでん返しがあるかもしれないよ…!」
「緑谷、それ口にしたらなるなるパターンだ…」
緑谷と瀬呂が必死で励ます。
しかし、
「試験で赤点取ったら林間合宿行けずに補習地獄!そして俺らは実技クリアならず!!
これでまだわからんのなら貴様らの偏差値は猿以下だ!!!!」
上鳴の胸には何も刺さらない。
寧ろ傷口を抉るだけらしい。
「わかんねぇのは俺もさ、峰田のおかげでクリアはしたけど寝てただけだ。
とにかく採点基準が明かされてない以上は…」
「同情するならなんかもう色々くれ!!」
上鳴が叫んだ瞬間、
カァン
「予鈴が鳴ったら席に着け」
ドアが開かれ、相澤が入って来た。
「おはよう、今回の期末テストだが」
早速本題に入り、生徒達はゴクリと唾を飲む。
「残念ながら赤点が出た」
やっぱり、と赤点組は絶望感漂う表情になる。
しかし、
「したがって……
林間合宿は全員行きます」
「「「「どんでん返しだぁぁ!」」」」
「筆記の方はゼロ。
実技で切島・上鳴・芦戸・砂藤、あと瀬呂が赤点だ」
やっぱりそうか、と瀬呂は項垂れる。
「行っていいんスか俺らぁ!!」
行けるという嬉しさを前面に押し出し、そんな質問が教室を飛び交う。
「今回の試験、我々敵側は生徒に勝ち筋を残しつつ、どう課題と向き合うかを見るよう動いた。
でなければ課題云々の前に詰む奴ばかりだったろうからな」
「…ま、本気で叩き潰すって言ったのは合理的虚偽ってやつだが、全部が嘘ってわけじゃない。
赤点は赤点、おまえらには別途補習時間を設けてる。
ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツイからな」
赤点組は再び悲壮感を漂わせたが、もう誰も何も言わなかった。