第12章 見え隠れするは爪か牙か
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「わー、なんか新鮮な組み合わせだね!
頑張ろうね!」
ぐ、と右手で拳を作る終綴。
目当ての教師は相手ではなかったが、残念そうな素振りは見せない。
「おー、頑張ろうぜ!」
そう頷くのは瀬呂。
その隣では峰田が
「釦全閉めも…これはこれで…」
などと呟きながら唾を飲んでいる。
恍惚とした表情で、既に始まっている筈のテストのことなど頭からすっかり抜け落ちている様子だ。
そして、
カツリ
ヒール靴の独特な足音を終綴の耳が拾った。
「…来る」
途端に引き締まった表情になる終綴。
瀬呂も峰田も、それに釣られて前に目を遣る。
「もうテストは始まってるのよ…?
随分と余裕なのね」
妖艶な笑みが覗き、瀬呂の脳内にフラッシュバックするは体育祭の記憶。
実際に体験したわけではないが、爆豪が一瞬で眠らされたことは鮮明に覚えている。
───体からの香りで眠らせる、か。
───て、呼吸できなくなっちまうけど…
───依田の個性が有利だ!
チラリと見ると、終綴もにこりと笑った。
そして、
「………あなたの個性って、汎用性高すぎないかしら」
自分の個性が発動できないことに気付くミッドナイト。
半ば諦めたように笑っている。
自分たちの勝利を確信したとき、しかし、予想外の出来事が起こった。
ファ……
終綴の全身から、色の着いたものが漂ってきた。
「!?」
ミッドナイトの個性とそれは酷似している。
───おいおい嘘だろ!?
しかし、終綴本人はそれに気付いていないようで、平然とゲートの方へと歩いていく。
「ダメだ峰田!!!」
そして、咄嗟にとったのがこの行動だった。
峰田の体をテープで縛り、そのまま後方へ投げ飛ばす。
その瞬間瀬呂は香りを嗅いでしまい、意識がブラックアウトしたのだが。
そして峰田は「瀬呂ぉぉぉぉぉぉ!!!!」と叫び。
終綴はゲートを潜った。
『依田、単独クリア!』
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