第12章 見え隠れするは爪か牙か
「それじゃあ演習試験を始めていく」
ズラリと揃った教師陣の前に、生徒たちも並ぶ。
その場にいる全員が、ヒーローコスチュームを着用していた。
───全員?
終綴は違和感を覚える。
ただの対ロボ戦線なら、教師は2,3人で充分のはずなのだから。
「この試験でも、勿論赤点はある。
林間合宿行きたけりゃ、みっともねえヘマはするなよ」
そして、終綴が感じたものと同じく、耳郎や葉隠も首を傾げている─────葉隠は見えないので、おそらく、なのだが。
「先生多いな…?」
その言葉に、しかし相澤は表情ひとつ変えない。
「諸君なら事前に情報仕入れて何するか薄々わかってはいると思うが…」
モゾモゾ。
首元の捕縛武器が蠢いたかと思うと、そこから出てきたのはシロクマでもネズミでもなく─────根津だった。
名門校の校長らしからぬ愛くるしい姿だが、彼の言葉は生徒たちの心に不安と動揺を植え付けた。
「残念!!
諸事情あって、今回から内容を変更しちゃうのさ!」
「へ、変更って…」
八百万が不安げな声を出す。
それもそうだ、皆対ロボを想定して来ているのだ、今になって変更と言われて動揺しない者の方が少ないだろう。
もっとも、終綴・轟・爆豪の3人には眉をピクリと動かしただけで、あまり驚いた様子は見られないのだが。
「諸君らにはこれから
2人1組でここにいる教師1人と戦闘を行ってもらう!」
親密度や成績・弱点等、様々な要素を加味して組まれているらしい。
このクラスは奇数なので、1組だけ3人のところが出るようだ。
しかし、と相澤は注意を加える。
「先に言ってしまえば終綴…おまえの所が3人な訳だが
3人1組ではない。
3人で同じ教師と戦うってだけだ。
2人1組と、終綴1人だ。
つまり、ゴールはおまえ1人がしっかりゴールしなければ、ほかの2人がゴールしてもおまえは赤点だからな」
協力するかは任せる、とのこと。
ふうん、と終綴は頷く。
───どうせなら1対1で戦いたかったけど、ワガママは言えないか。
「がんばりまーす!」
笑顔を作り、気を引き締めた。
プロヒーローとの実戦。
ハンデはあるものの、貴重な体験であることは間違いない。
できればあの人と戦いたいと思うが───────