第12章 見え隠れするは爪か牙か
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んだよ、と気の抜けたような声を出したのは上鳴と芦戸だ。
2人は対人だと個性の調節が難しく、それを懸念していたのだ。
「ロボならぶっぱで楽勝だ!!」
「あとは勉強教えてもらって…」
「「これで林間合宿バッチリだ!!」」
わぁい、と無邪気に喜ぶクラスメイトたち。
しかし、それに水を差す人物が1人。
「人でもロボでも、ぶっとばすのは同じだろ
何がラクチンだ、アホが」
途端に教室は静かになる。
轟と話していた終綴もそれにつられて口を噤み、そしてそちらに視線をやる。
余程楽しい会話だったのか、それが止まって不満顔だ。
「…そんなにカッカしないでよ、今より凶悪ヅラになってどうするのさ」
終綴は本人に話しかける。
軽く話すことによって、この空気を和らげようとしたのだ。
しかし、爆豪は終綴を睨むばかり。
ついでにと言わんばかりに、一緒にいる轟をも睨みつける。
「うっせぇ。…………どけ」
凍ったクラスの空気に、爆豪が低く唸った。
さっと道が開き、終綴は場違いにも「モーセみたい…」と呟いている。
ドアの正面に立っている終綴を体当たりでどかす。
「俺に」
ドアを開き、視線だけをこちらに寄越してきた。
「体育祭みてぇなハンパな結果は要らねえ……!
次の期末なら、個人成績で否が応にも優劣つく…!
完膚なきまでに差ァつけて
てめぇらぶち殺したる!」
そう言って指さすは轟・終綴・緑谷の3人。
それぞれの反応は待たず、
そのまま爆豪は帰っていった。
終綴が廊下に出て呼び止めるも、爆豪は振り返ることすらしなかった。
無視されちゃった、と残念そうに終綴は教室に戻ってきた。
入学当初と同じような、ピリピリしたクラスメイトに各々は唾を飲み込む。
終綴だけはヘラリと笑っていたけれど。
教室は、そんな固い空気で、包まれていた。