第12章 見え隠れするは爪か牙か
「でもさぁ、問題は演習試験だよねぇ…」
困ったね、とでも言うかのように終綴は眉を顰めている。
「突飛なことはしないと思うが…」
飯田も僅かに不安げだ。
普通科目を心配していない様子の4人に麗日は複雑そうな表情を浮かべたが、それも仕方あるまい。
飯田・緑谷・轟・終綴共にクラス上位の成績─────否、終綴は理系科目に限るが─────を誇っているのだ。
自分との学力の差に悲しくなってしまうが、これ以上は何も考えないことにした。
「お兄ちゃん、一学期の総合的内容…としか教えてくれなかったよ」
つまらなそうに唇を尖らす終綴。
しかしながら、それだけでは何の助けにもならない。
むぅ、と終綴が唸っていると
あイタ!
緑谷の声でそれは遮られた。
「ああごめん、頭大きいから当たってしまった」
緑谷の後方に立っていたのは、隣のクラスの金髪すまし顔。
名前は知らないが、確かコピーの個性だった筈。
「えっと…物間くん!!よくも!」
飯田は憤慨するが、物間はそれをものともしない。
「君ら、ヒーロー殺しに遭遇したんだってね」
「体育祭に続いて、注目を浴びる要素ばかり増えてくよねA組って。ただその注目ってトラブルを引き付ける的なものだよね?
あー怖い!いつか君たちが呼ぶトラブルに巻き込まれて僕らにまで被害が及ぶかもしれないなぁ!
そうだ、昨晩の事件も君たちを狙う者たちだったのかもしれないねぇ!?
ああ怖………っふ!!!」
シャレにならん、と拳藤の手刀で落ちる物間。
ごめんなA組、と拳藤は謝る。
その様子はまるで物間の親のよう。
「期末の演習試験さ、
入試ん時みたいな対ロボットの実戦演習らしいよ」
どうやら先輩に聞いて知っていたらしい。
そうかと納得し再びブツブツし始める緑谷に拳藤はギョッとしていたが、何も言わなかった。
「ばかなの…かい、憎きA組を出し抜くチャンスだったのに…」
「憎くはないっつーの」
そのまま、物間は拳藤に引き摺られて離れていった。