第12章 見え隠れするは爪か牙か
***
こんな話になったのは、いつものメンバーで昼食をとっているときだった。
「休みの日には、何をしている?」
轟は、「母の見舞い」。
緑谷は「筋トレ」。
飯田は「自主トレ」。
麗日は「家事」。
さて終綴は、となったのだが。
どう答えようか。
終綴のプライベートは謎に包まれており、また、成績も優秀だ。
気にならない理由がない、とのこと。
───うーん…
「私もトレーニングかな。
コスチュームの修繕をすることもあるよ」
きつねうどんを啜ってから、にこにこと笑った。
「「………!!!!」」
目が輝いたのは、飯田と緑谷だった。
前から2人は終綴が気になっていたらしい。
最初に訊ねたのは緑谷だった。
「普段はどんなトレーニングをしてるの?」
「普通に筋トレだよ。
重石付けて走ったりするだけ」
前に飯田にも話したなと思いながら、同じことを返す。
そして、ああそうだ、と付け加える。
「サンドバッグも使ってるよ」
「サンドバッグかぁ…!
依田さん、キックも強いもんね!」
「…ありがと!嬉しいや」
にこり、終綴は笑う。
それから緑谷は自分の世界に入りブツブツと呟き始めたが、それはいつものことなのでスルーだ。
「ならば俺も…1つ聞いてもいいか、依田くん!」
飯田の改まった態度に、終綴は何?と促した。
「君のコスチュームはスーツだが、被服控除は利用しているのか?あまりジロジロ見るのは失礼かと思い、あまり見れていないのだが…特別な素材を使っているのか?」
興味津々、といった感じだ。
終綴はそれに笑い、そして頷──────こうとして、くしゅんとくしゃみした。
「だ、大丈夫か!?風邪か!?」
「ぐすっ…大丈夫、花粉症なだけだから!」
鼻をすすり、終綴は何でもないというように笑った。
「そ、そうなのか…?」
「うんっ、大丈夫!やだなとは思うけど、仕方ないもんね!」
にこにこっと笑ってから、終綴は人差し指を下唇にあてた。
宙を見つめ、考えるような素振りを見せる。
「えーとね、被服控除?はね、使ってないよ!あのスーツで充分だからね!動きやすいし!!!」