第12章 見え隠れするは爪か牙か
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───この感覚、デジャブ…
やはり痛む腰を気にしながら、終綴は登校していた。
───ああもう、あのバカ…
終綴は気付いていなかった。
一人暮らしを始めてから、彼とは顔を合わせる度に体を重ねているということに。
それも、最初の1回を除けば、全て相手から誘って(?)いることに。
それに気付くのは、いつになるのだろうか。
本人達以外は、家族皆が気付いているというのだが─────
終綴は恋人のことを思いながら、頭の中は「仕事」についてに切り替わっていく。
───もう少しみたい、だけど。
───敵連合の動きを含め、様子を見てから動くべきだと私は思う、けど……
───どうなんだろう。
───あいつは早く動きたがってたけれど。
───オールマイトがこれからどうなるかにも拠るよね。
ふむ、と考えているところで後ろから聞きなれた声がした。
「おはよーっす依田!」
切島だった。
駅の方から、派手な赤髪が見えた。
スイッチを完全に切り替え、にっこり終綴は笑った。
「おはよう、切島」