第12章 見え隠れするは爪か牙か
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そして、案の定。
「…で、男はどの位いるんだ」
青年の整った顔に薄く浮かぶ笑みは、全体的に冷たい。
薄い唇が発した言葉もまた、冷たいものだった。
「怒らな、で…学校の行事な、んだかっ…ぁ」
「怒ってないさ」
終綴の頬には、涙の跡。
生理的なものだ。
「クラスには、…お兄ちゃ、…入れて、15に…っひ、」
大きな染みのついたシーツは、皺くちゃになっている。
ガクガクと脚は震え、イヤイヤと終綴は必死で首を横に振る。
呂律も次第に回らなくなってきており、その口調は頼りない。
「も、むりぃ……っ」
「明日は仕事入れないから大丈夫だ、安心すればいい」
「そういう問題じゃ………や、ん、っ」
生暖かい快感から逃れるように身を捩るが、しっかりと押さえつけられていて、思うように動くことができない。
「けっ、ぺき、の、くせ…にっ……ひあああぁぁ!?」
終綴は痙攣している。
意識を失ったらしい。
そこには、普段のチャラけた様子の彼女も、戦闘時に見せる鋭い彼女も──────どこにも、存在しなかった。
そこにいるのは、ただ、「女」である終綴のみ。
「…おまえは綺麗だよ」
愛おしい恋人を見下ろし、青年は呟いた。
そして、
ギシリ
青年は終綴に跨る。
「さて…いつ起きるかな」
2人きりの時間は、まだまだ始まったばかりである。