第12章 見え隠れするは爪か牙か
結局その日は、その何とも恐ろしい事件で話題は持ち切りだった。
「えー、君らも知ってはいるだろうが
昨晩の件…
被害者たちは武器を持っていたり、完全に一般人とは言えないようだったが
体育祭で、諸君らは全国放送され、顔は割れている。
君たちが狙われる可能性もゼロじゃないから、充分注意するように」
敵連合の事もあるしな、と相澤の言葉は生徒達を脅かした。
───実際狙われたのは私だしね。
何食わぬ顔で終綴はそれを聞き流す。
他の生徒たちにはそれが恐怖するに充分だったようで、普段とは違う種の沈黙が漂う。
しかし、それを気にせずに話を転換するのも相澤である。
「…で、君らはそろそろ来る夏休みを楽しみにしていると思うが
もちろん30日間1ヶ月休める道理はない。
夏休み、林間合宿やるぞ」
空気は一変、
教室が嬉しそうに悲鳴をあげ、一気に騒がしくなる。
「ただし」
そこで相澤が水を差す。
「その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は、学校で補習だ」
一瞬静まった教室は、何人かからの「頑張ろうぜ」に湧き、それぞれがやる気を見せていた。
「楽しみだね!」
轟と話をしながら、終綴の心中は穏やかでなかったのだが。
───他の男と泊まりだなんて、絶対殺される……