第11章 忍び寄った影は消える
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「ねー!怖いよね〜…」
朝、教室に入って耳に入ったのは女子たちの怯えた声だった。
麗日の机を囲んで、何人かが話し込んでいる。
男子たちも心配そうな声を上げていて、何のことだろうと終綴はそちらへと歩み寄った。
それに1番早く気づいたのは切島だった。
「おー、依田、おはよ!」
「切島、おはよう!
…みんなで集まって、何話してるの?」
私も入れて!と終綴が普段と変わらず明るく言うと、飯田が苦しそうに顔を歪めた。
なぜそんなにも明るくいられるのか、そんな思いが滲んでいた。
「君は…今朝のニュース、見ていないのか?」
「ニュース?」
何かあったのだろうか。
生憎、終綴にニュースをチェックする習慣などない。
何か重大なことがあれば家族が連絡してくるし、わざわざニュースを確認する必要性を感じられないからだ。
もつとも、働いているときには、客相手にそのような話は沢山聞かされるのだが──────
何も知らないのを察したのか、緑谷が丁寧に教えてくれた。
「昨日の夜、路地で10人の大人が倒れてるのを発見されたんだ。
みんなどこかしら怪我をしていて、尚且つ血塗れだったらしくて………それで、病院で死亡が確認されたって話だよ」
その大人たちの周りには、ナイフや鉄パイプなど、明らかに凶器と判るものが散乱していたらしい。
しかしそれらのキズは古く、最近できたばかりのものではないとの見解があるようだ。
地域住民によると、争うような音も声も聞こえなかったということなので、謎が深まるばかりなのだそうだ。
男たちは普段、貧民街などで悪事を働き生き延びている集団の1つで、怨恨の可能性が高いと見られているのだが。
──ふうん、なるほど、ねぇ…
──なら、犯人候補はたくさん、かぁ。
緑谷は、この事件?についてかなり詳しく調べたらしく、ニュースキャスターさながらの説明を続けている。
でも、そのどれも目撃証言について言及しているものはなく、終綴は僅かながらに安堵した。