第11章 忍び寄った影は消える
「へー!怖い!めっちゃ怖いね!!」
──あ、死んだのか。
10人というから、恐らく自分が相手をした彼らのことだろう。
出血はさせていないはずだから、殺したのは自分以外の人間だろうが。
十中八九、電話した彼かその周辺だろう。
へぇ、とどうでも良さそうに思う。
──殺すほどでもないのになぁ。
──怒りっぽいよね、やれやれ。
「依田さんの言い方だと、とても怖がってるようには見えないけどね…」
緑谷の苦笑に、そお?と終綴はとぼける。
生真面目な飯田は、ブンブンと手を上下に振り、そうだぞ!と言う。
「依田くんはいつも笑っているが、感情だってあるのだぞ!!!
か弱い女性なのだ、怖くないわけがないだろう!!
ということで、今日から暫く彼女を自宅まで送り届けるというのはどうだろうか!?」
「なんか飯田って依田に甘くない~?」
「まさかっまさかっ!」
女子たちの視線に、飯田は「そ、そうか!?俺はこれが普通だぞ!」と慌てている。
その光景に、終綴はあははと笑った。
今まで、女子が周りにいなかったからか、こんな絡みを見るのはとても新鮮だった。
そして数秒後、例のごとく一瞬で静まり席につくクラスメイトたち。
相澤はジト目で教室を見回していたが、やがて諦めたように、HRを始めた。
いつも通りの1日。
こんな日常はいつまで続けられるのだろうか、と終綴は密かに思っていた。