第11章 忍び寄った影は消える
慌てて、男たちは弁明(?)を始める。
「ちっ違う!!今のは言葉の綾だ!!
俺たちが声をかけたのは、元"カ………!!」
言いかけたところに、鋭い蹴りが炸裂した。
ゴボ、と嫌な音が響いて、男はその場に崩れ落ちる。
「なら、尚更でしょう。
………で?次は誰から来ますか?」
男たちは怯えた。
この人数で、負けることはないだろう。
だが、確実にやられるであろう最初の何人かには、なりたくなかった。
目配せをしていると、その隙をついて、女は動き出した。
倒れた男を踏み台にし、跳躍。
そのまま近くにいた女の頸動脈狙って蹴り上げ、流れるような動きで隣にいた男の顔面に足をめり込めさせる。
我に返った男は鉄パイプで殴り掛かるが、女はそれを躱し、首に手刀を入れる。
ナイフの男には目に指を突き刺し、その隣の男には耳に平手打ち。
鼓膜を破ることが目的の、危険極まりない行為である。
後ろから飛びかかってきた男の股間を蹴り上げ、腕を捻り上げながら投げ飛ばし、その方向にいた女と同時にノックアウトさせた。
容赦なく急所ばかりを狙うえげつない行為に、残された2人の襲撃者は唖然とした。
「なんっ……」
「こ、こっちは10人だぞ…?」
「今はもう2人ですけど」
平然と返す女。
暇なのか、目の前の2人を敵としてすら見ていないのか────少し癖のついた柔らかい髪を、指に巻き付けて遊んでいる。
今となっては、2人の持つ大型ナイフですら心もとない。
勝てないと悟ったのか、2人は一目散に逃げ出した。
しかし、女はそれを許さない。
「逃げちゃだめでしょ、ホラ、獲物はここだよ?」
そう言って、本人曰く獲物────傍から見ればどう見ても立場は逆だが────、は狩人に襲いかかった。
男の背中にドロップキックをかまし、女から奪い取ったナイフを胸に当てる。
「ひぃっ…」
「ハイ、質問ね。
あんたら、これで全員?仲間は他にもいる?」
質問などという生ぬるいものではなく、尋問。
逆らったら殺されると思った女は、コクコクと頷いた。
「そっそうよ、私たち15に………あっ」
ここに来たのは10人。
土壇場に立たされた哀れな女は口を滑らせ、そう、と納得した獲物に顎を外された。