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水面下の梟【ヒロアカ】

第11章 忍び寄った影は消える



***

「そういや、依田ってどこ住みなん?」

上鳴の質問に、終綴はへらっと笑った。
流れで3人一緒に帰ることになってしまい困っているのだが、終綴はそれを表情には出さない。

「学校から3時間くらいのところ。
一人暮らしなんだけどね」

片道3時間って辛くね?

と言ったのは切島だ。

一人暮らしというのは、学校から近い場所に家を借りるものではないのだろうか。
些細な引っ掛かりを感じたが、突っ込むほどでもない。

そうでもないよ、と笑う終綴にそんなもんか、と頷いておく。

「2人は?
家、学校から近いの?」
「俺は30分くらい」
「近くはねーけど、それでも1時間くらいだな」

へー!と終綴は羨ましそうに目を輝かせる。

まるで仔犬が尻尾を振っているかのようで、その愛らしさに2人は赤面した。

顔立ちが整っていることもあって、一々、言動にドキドキしてしまう。
暫く3人は他愛ない話を続け、それから話題は体育祭に移った。

「そういやさ、体育祭、おまえ惜しかったよなー!」
「運動神経やばくね!?
スポーツとか、何かやってんの?」

2人からの称賛に、終綴は嬉しそうだ。

「ほんとに!?嬉しい!!
スポーツは何もしてないよ、家事の手伝いで忙しかったから」

家事の、手伝い。
女子らしい答えに、上鳴は歓喜した。
切島もすげぇ、と感心している。

「親、共働き?」

だから家事してんのかな、くらいの軽い気持ち。
しかし、返ってきたのは想像以上に重い答えだった。

「うち、お母さんいなくて、お父さん病気で寝込んでるからさ」

「………」
「………」

踏み込みすぎたか?

上鳴と切島は、気まずそうな表情を浮かべた。
それを鋭く察した終綴は、へらへら笑う。

「気にしなくていいよ?
お母さんいないのもお父さん寝込んでるのも、両方ともお父さんの自業自得らしいから」

らしい、というのは終綴はそれを誰かから伝え聞いたということだろうか。

父親に対して妙に厳しい気もするが、年頃なのだろうと納得する。

そして、終綴が新しく投げかけた問いに2人は飛びつく。

気まずい空気を、振り払うかのように。




「なんで、ヒーローになりたいと思ったの?」



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