第10章 灯る闇は光のように眩く
終綴がそこに降り立つと、やはり。
そこには脳無らしき怪物がいた。
身体はベージュ、生えた羽は蝙蝠のような形をしているがそれはかなり大きい。
深い藍色のズボンを履いている。
脳無というのは上裸にズボンというのが決まりなのだろうか?
先程見かけた脳無たちもそんな格好をしていた。
足も特徴的で、鶏のそれと酷似している。
やはり違うのは大きさだけ。
その類いの個性でも掛け合わせたのだろうか?
───普通に考えて、こいつも個性複数持ちだろう…けど。
ヒーロー殺しとは繋がりがあるのだろうか。
偶然にしては、タイミングが出来すぎている気がするけれど。
───拷問…口を割るとは、思えないけど。
まあいいや、と終綴は呟いた。
時間はたっぷりある。
そして脳無もこちらに気付いたようで、奇声を発しながらこちらに飛んできた。
当然それに終綴も気づき、
軽く息を吐いて
脳無の元へ駆けた。
一気に巨体の懐に潜りこみ、いつの間にか手にしていたサバイバルナイフで左目を抉る。
「あんたら、敵連合だよね?
ヒーロー殺しとは繋がってるの?仲間?」
問いただすが、脳無は目を失った痛みに悶えるだけ。
「もう一度訊く。
あんたら、仲間?」
答えは無い。
───意思疎通は無理か。
溜息を吐き、終綴は愛用のスタンガンを取り出した。
バチバチッ
傷口に容赦なく電気を流し込む。
ギェアアアアアアアア
苦しそうに暴れる脳無に眉を顰め、終綴は「うるさい」と喉に手刀を入れた。
彼女の攻撃は何とも理不尽で且つ的確だったが、赤く燃える何かを視界の端で捉え、終綴は慌てて武器を仕舞った。
それを隙と見たのか、脳無は終綴の小柄な身体を吹き飛ばし、そのまま空へと逃げていった。
「何をしている!?」
「ごめんエンデヴァーさん、脳無に襲われて!逃げられた、追いかけて!私は大丈夫だから!!!」
叫ぶと、エンデヴァーは終綴の指差した方へと走って行った。