第10章 灯る闇は光のように眩く
当日
「コスチューム持ったな?
本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ、落としたりするなよ」
「「はーい!!」」
「伸ばすな、はい、だ芦戸・終綴。
くれぐれも失礼のないように!
じゃあ行け」
ばいばーい、と実兄に手を振りながら轟の元に駆け寄る。
手を振り返してもらえるどころか、こちらには見向きもしなかったが、今更気にすることではあるまい。
「行こ!」
「……あぁ」
表情が硬い。
やはり緊張しているのだろうか。
少なくとも、思うところはあるのだろう。
轟本人から直接話を聞いたことはないが、それでも彼の抱えているものは何となく知っていた。
───……あぁ、こっちの心配してる、ってのもあるのかな。
轟の視線は、クラスメイト─────飯田から離れない。
飯田の瞳は、見覚えのある色に包まれていた。
憎しみ。
そう言葉にするのは簡単だろう。
けれど、それでも。
高校生が普通に生活していれば抱く筈のない感情だし、しかしながら、終綴はそれをよく見てきた。
その色を。
───飯田、保須って言ってたもんね。
ヒーロー殺しに対して向けられているであろうその強い感情は、果たして自制することはできるのだろうか。
───できない気もするけどなぁ。素人だし。
───多分、私も…大切な家族が傷付けられたら、我慢なんてできっこないし。
───彼を殺されたりなんかしたら、きっと私は───────