第10章 灯る闇は光のように眩く
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「…悪かった」
向かいの席について開口一番、轟はそう言った。
よく考えてみればまともに会話するのはこれが初めてのことで、だからこそ、そんな言葉をかけられるとは思っておらず、終綴は思い切り仰け反る。
「へ!?
私、轟に悪いことなんてされたっけ!?」
大げさに驚くと、体育祭、と呟きが返ってきた。
───なるほど。
個人戦でのことを言っているらしい。
感情が昂りそれをぶつけたのを、申し訳なく思っているようだ。
終綴としては気にするどころか、すっかり忘れてすらいたのだが─────
轟としては、気になっていたようだ。
「緑谷と話して…どうしていいかわからなくなっちまって
……………………………悪ぃ」
微妙な沈黙に、様々な思いが込められているような気がした。
「やだなぁ、全然気にしてないよ!大丈夫!!」
何故こんなに申し訳なさそうなのかとも思ったが、よく考えてみれば、轟は今までクラスメイトたちとつるんでいなかった。
友達が少ない─────否、いないのかもしれない。故に、人付き合いの仕方がわからないのかも、と。
言ってしまえば終綴にもそれは同じことだったのだが───────
彼女の付き合いの良さは、どこから来るのだろうか。
「すまねぇ」
僅かに微笑み、轟は好物である蕎麦を食べ始めた。
気にしすぎだよ、と終綴も笑った。
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