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水面下の梟【ヒロアカ】

第10章 灯る闇は光のように眩く



***

「…悪かった」

向かいの席について開口一番、轟はそう言った。
よく考えてみればまともに会話するのはこれが初めてのことで、だからこそ、そんな言葉をかけられるとは思っておらず、終綴は思い切り仰け反る。

「へ!?
私、轟に悪いことなんてされたっけ!?」

大げさに驚くと、体育祭、と呟きが返ってきた。

​───なるほど。

個人戦でのことを言っているらしい。
感情が昂りそれをぶつけたのを、申し訳なく思っているようだ。
終綴としては気にするどころか、すっかり忘れてすらいたのだが​─────
轟としては、気になっていたようだ。

「緑谷と話して…どうしていいかわからなくなっちまって
……………………………悪ぃ」

微妙な沈黙に、様々な思いが込められているような気がした。

「やだなぁ、全然気にしてないよ!大丈夫!!」

何故こんなに申し訳なさそうなのかとも思ったが、よく考えてみれば、轟は今までクラスメイトたちとつるんでいなかった。

友達が少ない​─────否、いないのかもしれない。故に、人付き合いの仕方がわからないのかも、と。

言ってしまえば終綴にもそれは同じことだったのだが​───────

彼女の付き合いの良さは、どこから来るのだろうか。

「すまねぇ」

僅かに微笑み、轟は好物である蕎麦を食べ始めた。
気にしすぎだよ、と終綴も笑った。


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