第1章 イランイラン
「貴女が望んだんですよ? 亜紀」
「私、が?」
「ええ。貴女のカラダがイランイランに反応したから」
「は……ぁんっ!」
拒絶していたはずの彼の手が私のそこに触れた。
「イランイランの催淫作用に導かれて貴女のカラダは体温を上げた。
だから、貴女は……」
「ひゃあっ!」
ひくつく裂け目に、オイルが垂らされた。
彼の掌が私のそこを覆う。
あたためられたオイルが擦り付けられて、私のなかから溢れ出したものと混じって、ぴちゃりぴちゃりと音を立てた。
「だから、ね?
貴女はこのオイルのディフューザーになりなさい、亜紀。
そのカラダで」
「ぁ……ぁ、はぁんっ……」
ぴちゅ、ぴちゅ。
ぴちゃり。
ぐちゅり。
開ききったそこをまるで器のように使われて、私のなかでオイルが混ぜられてゆく。
掌から、指へ。
彼のそれも変わって、私のより深い場所へ埋め込まれて。
最初は自分の足の指を彼に咥えられ濡らされたけれど。
今は私自身の濡れた肉が彼の手の指を咥え込んでさらに濡らしている。
「んっ……ゃ、ぁ……ぁ」
静かな薄暗い部屋で、淫靡な水音と私の声だけが響いていた。
どれくらい続くんだろう。
もう、どれくらいこうしているんだろう。
チェストの上の焦茶のボトルを見た。
細い……細過ぎるスティックが数本差し込まれている。
あんな細いものでは無くて。
ううん。
それでもあんなふうに何本も差し込まれたなら、きっとこの疼くなかに触れるように掻き混ぜてくれるだろうに。
そんな欲望を抱いてしまうほどに、私のなかは淫らな水音を立てることしか許されなくて、彼の指はまるで私の肉に触れることを避けているようだった。
こんなの……ただ辱められているだけだわ。
私は本当にただのディフューザーなの?
屈辱。
諦めきれない欲望。
水音を聴かされるだけの羞恥。
でも、それは、私のなかに埋められた彼の指が増やされる瞬間を迎えて消し飛んだ。
待ち望んだその瞬間。
「……ぁ、ぁんっ……ぁはあああっ!」
「ずいぶんと淫らな声を出すディフューザーですね、亜紀は」
肉を蹂躙し掻き出されるオイル。
その芳香の、その淫らさが、今の私のすべて。
ディフューザーでいいの。
物でもいいの。
私は私を解放したい、この甘い香りに。