第3章 後編 王の願い 少女の想い
「どうせユーリが出ていく理由に、心当たりがありすぎるんだろう?何故もっと優しく接してやらないんだ」
シャンクスから当てられる殺気をものともせず、ベンは言葉を続けた。
誰かが、いい年したこの大人の恋愛相談に乗ってやらないと、何時までも拗らせたままだ。
毎回損な役回りを買って出ているベンは、勘弁してくれよと思いながらダバコの火を消した。
これはユーリの為であり、シャンクスの為でもあるが、何より自分の為だ。
頼むからこれ以上巻き込まないで欲しかった。
「……10年振りにやっと見つけたんだぞ?多少暴走しても仕方ねぇだろ」
「堂々と開き直ってるんじゃねぇよ。だから逃げられるんだろうが」
「そもそも、その10年間何をしていたのか一切話さねぇし。下手をすれば昨日のあの野郎と…」
「それはユーリが言ったのか?」
「…あいつは否定していたが」
「なら、信じてやれよ。その手紙だってそうだ。この拗れまくった関係を少しでも修復する気があるなら、まずは彼女を信じてやれ。後、優しくしてやれ」
大の大人二人が何やら真剣に恋愛相談をしている。
その光景を他の仲間が見たら、皆目を疑うだろう。
ベンからすれば一緒にするなと言いたいところだが、ここまで来た以上後に引けない。
ベンの言葉に押し黙ったように、考え込むシャンクス。
まったく、戦闘やその他の事については彼が上だろうが、色恋沙汰になると、こうも不器用になるのか。
ベンは何処か遠い目をしながら、再びタバコを取り出し火をつけた。