第3章 後編 王の願い 少女の想い
シャンクスへ
少しだけ用事があるので、一度船を離れます。
仲間になると約束したので、必ず戻ります。
そんなに時間は掛かりませんので、航海は続けていてください。
「おい、ベン。これはどういうことだ?」
シャンクスが船に戻ると、いきなりベンから手紙を渡された。
不審な表情をして受け取ると、相手がユーリだと言うので慌てて紙を開く。
書いてある内容に、当然ベンを問い詰める彼。
そしてベンはベンで、こうなることは予想していたので、タバコの煙と共に深いため息を吐いた。
「俺が知るわけないだろ?いきなり渡されてどっか行っちまったんだから」
「何故止めなかった?」
「止めるも何も、直ぐに戻ってくるんだろ?少しは彼女を信じてやれよ」
「信じるも何も、おれ達がここを離れたら、あいつはどうやって合流するんだ?」
苛立ちを隠しもせずに手紙を睨みつけている彼を、ベンはどうしたものかと頭を悩ませていた。
いっその事、ユーリのビブルカードでも作ってやれば彼も少しは落ち着くのだろうか。
彼女には申し訳ないが、いい加減二人の間に挟まれるこの現状をどうにかしてほしかった。
「…彼女が、こういう行動に出た原因に思い当たりはあるのか?」
「……」
ベンの言葉に、シャンクスは僅かに眉をひそめる。
彼女が出ていく原因など、いくらでもあるだろう。
そもそも彼女はシャンクスを嫌っているようだし。
考え込んでいるシャンクスに、ベンは何かを察したのか、ユーリを少し同情した。
「…昨晩、無理やり連れ込んでいったみたいだが、それじゃねぇのか?」
あえて誰も触れなかった昨晩の出来事を口にできるのは、恐らくベンだけだろう。
案の定、シャンクスが身に纏っている空気が悪い物へと変わった。