第3章 後編 王の願い 少女の想い
ユーリは当てられた覇気で一瞬意識が遠くなったが、何とか踏みとどまった。
そして段々腹が立ってきたので、彼女の周りからも覇気が漏れ始める。
店内にいた綺麗なお姉さんを思い出す。
自分の事を棚に上げやがってと思い、ユーリは彼を睨みつけた。
「ほぉ、反抗的だな?もう弁解しなくていいのか?」
薄笑を浮かべてユーリの両頬を片手で掴むと、その瞳を覗き込む。
美しい翡翠色の瞳には、シャンクスと同じように怒りの色を浮かべていた。
彼女も怒っているようだが、そんなことはどうでもよかった。
折角弁解の余地を与えたのに、彼女が言葉を発する気配はない。
それはあの男と行動を共にしていたことを、肯定しているのか否定しているのか。
もし、前者だとすれば…
「…ッ…!」
シャンクスは時間切れだとばかりに、噛みつくようにその唇へと口づけた。
手加減など一切せず、舌を差し込みその口内を荒らすと、掴んでいた顎に力が入る気配がした。
恐らく噛みつこうとしたのだろうが、シャンクスが掴んでいる手に力を込めてそれを防ぐ。
苦しそうなユーリの声が響く中で、シャンクスはその表情を静かに見ていた。
上気した頬に泣きそうで、苦しそうなその表情。
口づけから解放してやると、彼女は荒く息を吐き出していた。
そんな彼女を見ていて、ゾクリと何かが背中を這いあがる。
酷薄な笑みを浮かべ軽く舌なめずりする彼の瞳は、捕食者のそれだった。