第3章 後編 王の願い 少女の想い
「おれの仲間に、何か用か?」
二人の間で再び気まずい空気が流れていると、突然ユーリの腕を掴まれた。
「…赤髪」
何時の間にか近くに来ていたシャンクスに引っ張られ、椅子から立たされそのまま腰に手を回された。
「ここが、おれの縄張りだと分かってて来たのか?」
「……そうだ。どうしてもこの島に用があってな」
痛いほど感じる殺気の中で、シュライヤは嫌な汗が流れ落ちたが、動揺することなくここに来た目的を話した。
相手は四皇の一人と言えども、話せば分かってくれると思っていた。
他の3人は知らないが、少なくともシャンクスの人柄の良さはそれなりに噂で聞いている。
出来れば会わずに済ませたかったが、ここで鉢合わせた以上、用意していた答えを述べるしかない。
それを黙って聞いているシャンクスが、何を思っているのかは分からない。
だが、ここで交戦しても勝てるわけないし、目的も諦めたくない。
だからシュライヤは、出来る限り穏便に彼に頼み込んだ。
「そうか、分かった」
そして粗方話し終えると、予想通り許可が下りた。
目的自体も、別に悪いことをしようとしているわけではないのでそこまで心配はしてなかったが、シュライヤは安堵のため息を吐いた。
だがそれも、次に放たれた言葉によって瞬時に凍り付く。
「目的とやらは好きにするといい。だが、こいつには二度と近づくな」
ピシッと床にひびが入る。
僅かとはいえ彼が放った覇気は、その場の空気を凍り付かせるのに十分だった。
そして驚いたような表情をするシュライヤを置いて、ユーリを引きずるように連れていく。
その後ろ姿を、何とも言えない表情で彼は見ていた。