第3章 後編 王の願い 少女の想い
女の目的が気になって声を掛けてみれば、予想外の答えが返って来た。
今まで、そのような返事をしてきた女を見たことがない。
しかも握手って…
シュライヤは差し出された右手を、暫し見つめた。
彼女が能力者だという可能性を、当然だが疑っている。
だがなんとなく、悪意を感じられない彼女を敵だと認識する気になれなかった。
船長でありながら何とも甘い考えだとクルーから言われそうだが、シュライヤは彼女の右手を掴んだ。
「……おぉぉ……い、いい人ですね」
本当に握手してくれると思ってなかったのか、感動したような響きと共にそんな言葉が返って来た。
当然、能力が発動されてる気配は感じないし、身体に何の異変もない。
そっと手を外せば、何やら感動した表情をそのままに、手の眺めている彼女。
ここに来て漸く、彼女が言っていたことが本当のような気がしてきた。
「ファンって、一応俺は海賊なんだが?」
「あ、はい。それは知ってます」
「お前とは会った記憶も関わった記憶もないが、手配書でも見たのか?」
「あー、まぁ…そうですね」
そう言えば手配書を見たことがなかったが、ここで肯定しないと何故シュライヤを知っているのか不審に思われてしまう。
…あれ、じゃぁ私がファンって言う発言は、手配書を見てファンになったことになってるのか?
ようは、顔がいいと?
暗に見た目に惚れましたと言ってるようなものじゃないか?
その事実に辿り着いたユーリは、ハッとしてシュライヤに視線を向ける。
そこには、何とも言えない表情をしている彼がいた。