第3章 後編 王の願い 少女の想い
(ど、どどどどうしよう!目が合ってしまった!)
シュライヤがこちらに近づいて来ているとは知らず、ユーリはユーリで勝手に盛り上がっていた。
(いやいや喜んでいる場合じゃない!いい加減離れないと怪しまれ…)
「なぁ」
「へ!?」
不意に聞き覚えのある声がしたかと思って振り向けば、そこにはシュライヤが立っていた。
「さっきからこっち見てるみたいだけど、なんか用でもあるのか?」
「うぇ!?そ、あ…の…」
全く予想しなかった展開に、彼女の思考回路はフリーズする。
まさか向こうからこちらに来るとは。
ユーリはグルグルを回らない思考で、言葉にならない言葉を発していた。
その様子を不審な表情で見ているシュライヤ。
駄目だ、完全なる不審者扱いだ。
「す、すいません!実は私あなたのファンなんです!」
シュライヤからの視線に耐え切れず、気が付けばそう口走っていた。
「…は?」
案の定、目を見開き驚いている彼。
二人の間に、何とも言えない空気が漂った。
(あああああ!何口走ってるんだ私!いや本当のことだけど!!海賊相手にファンって発言おかしいだろ!)
頭を抱え込み何か唸っているユーリ。
そんな様子を見ていたシュライヤは何かを考えているようだった。
「……あー、で?それだけ?」
気まずい沈黙が続く中で先に口を開いてくれたのは彼だった。
視線を戻せば、微妙に疑いの眼差しを向けているシュライヤ。
「え、えっと…握手しても?」
ユーリはもうここまで墓穴を掘ったんだからどうにでもなれと、欲望のままに進むことにした。
最早彼の中でユーリと言う人物はただの変質者扱いだろう。
ユーリは開き直ることにして、彼に右手を差し出した。