第2章 中編 古代都市シャンドラ
何やら書類を整理しているローをユーリはぼんやりと見ていた。
特に帰れとも言われないので、立ち去るタイミングを逃したのもある。
後は、彼の病が気がかりなのもあった。
「…愛って何ですか?」
「は?」
ユーリが唐突に放った言葉に、ローは怪訝な表情をする。
「私は愛が分かりません。だからシャンクスの気持ちが理解できない」
ユーリはここに来て初めてシャンクスを理解しようと思った。
今までは何時か忘れるだろうと思っていたが、このままだと死ぬまで変わらない気がした。
そう思うと、無いはずの心が少しだけ痛んだのだ。
「それをおれに聞くのか?あいつに聞けよ」
「聞いたところでのらりくらりとかわされそうです。というか、何か身の危険を感じます」
シャンクスは何時も穏やかにユーリを見ているし、接する。
だが、ふとした拍子に彼の視線が変わるのだ。
それが主に、ユーリに思いを伝える場面だと、ここ最近気づいた。
穏やかな瞳とは真逆の色を浮かべている彼は、笑顔だけは顔に張り付けている。
ユーリはその瞬間が苦手だった。
「そういう感覚はあるのか。じゃぁその内分かるだろ」
「投げやりですか?まさか恋愛経験0なんですか?それとも童貞なんですか?」
その言葉に、ローの眉間に刻まれていたシワが深くなった。
「そう見えるか?」
「見えないから聞いているんです」
間一髪で返って来た答えに、ローは口元を引きつらせる。
大人しい印象の彼女だったが、なるほど、あのシャンクスと渡り合ってるだけのことはある。
ローはため息を吐くと、持っていた書類をテーブルに放り投げる。
そしてユーリの腕を掴むと、その場に引き倒した。