• テキストサイズ

王の孔雀石【ONE PIECE 】

第2章 中編 古代都市シャンドラ



シャンクスと過ごし始めて数日。


ユーリはバルコニーから茫然と海を見ていた。

ここに来てからこの場所はユーリのお気に入りの場所になった。

曇り空に覆われた海は味気ないが、ユーリは海が好きだった。

静かなさざ波に何処までも続く青。

それを見ていると、嫌な音を聞かなくて済む。

ユーリは無意識に詰めていた息を吐き出すと、シャンクスがこちらに向かってきた。

「相変わらずここにいるんだな。海が好きなのか?」

「…そうですね」

ゆったりとした足取りで隣に立った彼は、数日前にユーリのことを好きだと言ってきた。

最初は何か血迷ったのかと思ったが、彼はここに来てからも変わらず愛を伝えてくる。

その度に、ユーリは反応に困っていた。

しかしどんなに微妙な反応をとっても、彼は気にしないのか態度は変わらない。

それが余計に、彼女を困惑させていた。


「じゃぁ近くまで行くか」

そう言って自然と手を取られると、その場を離れる。

彼はユーリのことを機械として扱わなかった。

まるで人間のように扱うシャンクスに、ユーリは戸惑う。

そうしたところで、一体なんの意味があるというのか。

繋がれた手は本来なら暖かいはずだが、ユーリはその熱を感じることすらできない。

そして、握り返すこともできない。

鳥だった頃に出会った、婚約者のような人物と本来は結ばれるべきなのだろう。

今となっては彼女がどうなったかは分からないが、人間とは本能的に子孫を残す傾向があると聞く。

国王であり、命にも限りがある彼。

そんな彼が、私に時間を割いた所で無駄なのではないか。

私には彼の思いに応えれる機能もなければ、当然子供も産めない。

どう考えても、国王という立場の彼にとって、ユーリの存在はマイナスでしかないだろう。

だから、期待されても困るのだ。

そう何度も言ってるのに、まるで聞き入れてもらえない。

ユーリは彼から振られる他愛のない話題に応えながら、そっとため息を吐いた。





/ 242ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp