第2章 中編 古代都市シャンドラ
「って、飲酒は駄目だって言われてましたよね?病が悪化しますよ」
「固いこと言うなよ。あっちにいた時は隠れて飲むのが大変だったんぞ?」
「…ローさんに言いつけますよ?それと昨日から何も食べてなさそうですが、あなたの健康管理はどうなってるんですか?」
「…それはユーリがやってくれるから大丈夫だろ」
「なるほど、ではオイルでも飲ませましょうか」
ユーリは顔を引きつらせると、シャンクスから酒瓶を取り上げる。
意外とすんなり渡したのを見ると逆らうつもりはないらしい。
「ユーリの食事はオイルなのか?」
「私に食事という概念はありません。致命的な損傷さえなければ動けます」
シャンクスから恨めしそうな視線を感じるが、スルーだ。
ユーリは取り上げた酒瓶を手にキッチンへと向かった。
必要最低限に揃えられた調理器具に、食材。
見たところ、食材は暫く困ることはなさそうだが、それを調理するのはユーリだ。
その事実に、ユーリは頭を抱えた。
数日前、ローからシャンクスの病について詳しく聞かされた。
そして同時に、彼の世話も頼まれた。
放置すれば酒しか飲まない彼にローも頭を悩ませていたとか。
シャンドラにいた頃はシェフがいたからまだマシだったが、ここではどうする?
ユーリはカゴの中に入れてあった野菜を鷲掴みすると、何とも言えない表情になる。
古代兵器が料理など、当然だがやったことない。
食材を木端微塵にするのは簡単に出来るが、料理とはどのようにすればいいんだ?
机の上に置いてあった料理本を手に取って読んでみるが、意味が分からない。
そもそも料理本を用意してあるということは、料理が出来ないのを察しているのだろう。
ならば、いっその事シェフを定期的にこちらに呼べばいいものを。
食材と本を手に、何やら悶々と考え込んでいるユーリ。
そんな彼女の姿を、シャンクスは笑みを浮かべながら見ていた。