第2章 中編 古代都市シャンドラ
シャンクスの仕事が一通り落ち着くと、一時的にシャンドラを離れることになった。
案内されるままに連れていかれたのは、無人となった集落。
無人といっても荒れているわけではなく、幾つか立っている建物はどれも綺麗なものだった。
その中でも一番大きな建物に案内される。
海に面しているその建物は、シャンドラの王族が所有しているものだった。
今は誰も住んでいないようだが、話を聞けばここは有名なリゾート地だったとか。
窓から見える海の景色は、晴れていればきっと美しいものだったのだろう。
化学兵器の影響で空が雲で覆われているのを、ユーリは少しだけ残念に思った。
「…で、戦うからには何か案でもあるんですか?」
ユーリは暫く窓から景色を眺めていたが、悠長に酒を飲み始めたシャンクスに痺れを切らしそう尋ねる。
先ほどまで、シャンドラの兵士達が荷物の整理等をしていたが、何時の間にかいなくなっていた。
部屋に揃えられた家具等を見ると、ここで彼と過ごす事実を改めて実感せざるを得ない。
「焦る必要はねぇだろ。おまえも飲むか?」
「飲酒は故障の原因になります」
「それはまた、随分と脆いな」
「…冗談ですが。私が言いたいのは悠長にしている暇はないということです。何時攻められてもおかしくないんですよ?」
ここ数日前から聞こえてくる、嫌な音。
彼らは間違いなく、こちらに向かってきているのだ。
「そう言われてもなぁ、相手がどんな奴か分からない以上、考えても仕方ねぇだろ」
「まさかとは思いますが、考えもなしで私に着いてきたと?」
「考えてはいるぞ。おまえはおれが守ってやる、それだけだ」
真っすぐと伝えられた言葉。
交わった視線には、嘘も冗談も見えない。
彼は本気で、そう言っているのだ。
その事実に、ユーリは軽く眩暈に襲われる。
守ると言うのならば、どちらかと言えばユーリの方だろう。
仮にも一国の王を死なせるわけにはいかない。
彼の背にはどれだけの命が背負われているというのか。
それを分かってて尚ここに着いてきたというのならば、随分と酔狂な考えを持っている。
ユーリはそっとため息を吐いた。