第3章 EPISODE 1
輝はとても優しい子だ。そして泣き虫。
そんなところを見てるあの子のことを思い出す
泣き虫だけどとっても優しいあの子のことを。
今頃どうしてるんだろう...サッカー好きだったしサッカー続けてるだろうな
「あのね あのね!きょうね!こうえんにおさんぽいったときね!!」
目をキラキラしながら一生懸命今日あったことを話してくれる輝
「こら!輝!リビング片付けなさい!!おもちゃ捨てるわよ!」
「うわぁあ!だめー!!」
叔母さんがひょっこりとキッチンから顔を覗かせて 輝を見ながらいう
おもちゃを捨てられたくない輝はトタトタとリビングの方へとかけて行った
「ごめんね 樹希ちゃん。疲れてるのに」
「いえ!大丈夫です。弟が出来たみたいで楽しいです」
事実、兄弟がいない私にとっては従兄弟の輝が弟のようで
輝も兄弟がいない一人っ子なので私の事を「樹希おねえちゃん」といって慕ってくれてる。
「ふふっ そう言ってくれると嬉しいわ!.....もう遠慮なんてしなくていいんだからね?家族なんだから」
「...はい。」
''家族''か...。
私は自分の本当の親を知らない。
影山家に引き取られて、もう4年になる。
このことは影山家の人達と修也しか知らない話で、
今考えると 小学校低学年だった頃の私は授業参観などがあるときは決まって泣いてた気がする
孤児院では子供一人一人の授業参観など行くってらんない。
忙しいしね。
毎回 私達が「お姉ちゃん」と呼んでいた人がいつも泣いて帰ってくる私に「ごめんね樹希...」といって頭を撫でてくれたのを覚えてる
今考えると私って...とんでもないわがままっ子だったな...
でも そんな日も終わりを告げたのが10歳の時。
そう
私は影山家に引き取られたのだ。
初めは知らない人の家に引き取られてオドオドしてたり、孤児院のみんなが恋しくて泣いたりしてた
でも 決まって修也は隣にいたなぁ...
輝の家に初めて来た時は遠慮しまくって叔母さんが「そんなに遠慮しなくてもいいのよ?!」ってオドオドしてた気がする
「ふふっ」
「?どうしたの樹希ちゃん?」
「どーちたの?」
「いえ、昔の事考えてただけです」
丁度同時刻、
修也が円堂くんにサッカー部に勧誘されて心が揺れていることを知らずに 私はただ今あるこの幸せを噛み締めていた
