第4章 途方もない悪意
イレイザーヘッド______相澤消太は、職員室で仕事を進めていた。 斜向かいにはNO.1ヒーローことオールマイトが座っていて、生徒の名前を覚えるべく名簿表を見つめていた。 突然、オールマイトが席を立った。 職員室に設置してある固定電話に着信があったのだ。
「はい〜。 もしもし……ええ、はい。 はい……」
(ちゃんと電話出れんのか……?)
そう思い相澤がオールマイトを見ていると、彼は相澤に手招きした。
「俺か?」
オールマイトは頷き、相澤と電話を交代した。 オールマイトは自席へと戻る。
「はい、1年A組担任の相澤です」
「初めまして、神宮寺舞依の母の、最上 眼と申します」
「はい」
(最上……? 神宮寺とは苗字が違うが)
相澤は少し不思議に思ったが、それ以上はどうでもいいので考えなかった。
「実は先生にお願いがありまして……」
最上 眼は、澄ました声で話し始めた。
______
「相澤君!何だったの?」
通話が終わり自席に戻ると、オールマイトが斜向かいから不思議そうに聞いた。
「神宮寺の親御さんが、明日学校で娘に会わせろとさ」
「おや、神宮寺少女の……! 会わせろとは一体?」
「離婚した夫が、娘に会わせてくれないんだと」
「……ほう? それで?」
「それだけだ」
相澤はそう言うと、仕事を再開した。
オールマイトが、妙な胸騒ぎを覚えているとは知らずに。