第2章 雄英高校
「ねえ、舞依ちゃん」
「な、なに?」
「私達、素敵なヒーローになれると良いわね」
梅雨ちゃんは笑顔でそう言った。
(違う……違うの梅雨ちゃん。 私がヒーローになりたい理由は……)
考えないようにしていたことで頭がいっぱいになった。母から与えられた痛み。 兄の言葉。 何も言わなかった父。父とも母とも違う“個性”。 それらを思い出して、私の身はぶるりと震えた。
「……」
「ケロ?」
黙って俯いていると、梅雨ちゃんが心配そうに顔を覗き込んできた。 きっとこの子は、すごく優しい子なのだろう。
「そう、だね。 オールマイトみたいなヒーローになりたい……な……」
苦し紛れに、声を震わせながらそう言うと、梅雨ちゃんは覗き込んでいる体制のまま、怪訝そうな顔をした。
「ねえ、舞依ちゃ……」
「これにて終わりだ。 教室に戻るぞ。 カリキュラム等が机に置いえあるから、目ェ通しておけ」
梅雨ちゃんがなにか言いかけた時、相澤先生がA組全員に声をかけた。 先生、ナイス。
「戻ろっか」
ぐちゃぐちゃの頭で考え出した言葉。
私の声は、酷く掠れていた。