第6章 虎の少年
敦君から姿を変えた虎は治ちゃんに飛びかかる。
「葉琉、右手だ」
その言葉通り、異能力で拳大の氷の塊を勢いよく虎の右手に中る。しかし、ダメージはなくただ虎の動く方向を変えられただけだった。
「これは凄いねー。私でも勝てないかもよ?」
私はコンテナから降りて、治ちゃんの横に並ぶように立った。
「治ちゃんはあっちで構えてて。誘導する。こうゆうのは得意だから」
そう言うと小さい氷の礫を虎の顔に中てた。
虎は確実に私を仕留めようと狙って来た。
「おぉ、凄い。こんなの中ったらひとたまりもないね」
そう言い乍、虎の攻撃を躱し続ける。
そして、治ちゃんの前に立ち、突っ込んで来る虎をヒラリと躱した。虎はそのまま治ちゃん目掛けて突っ込んで行った。
「獣に喰い殺される最期というのも、中々悪くはないが…君では私を殺せない」
突っ込んで来た虎に治ちゃんの指先が触れる。
「私の能力は、あらゆる他の能力を触れただけで無効化する」
光に包まれた虎は、光が消えると敦君に戻っていた。意識なく倒れる敦君を治ちゃんは受け止めた。