第6章 虎の少年
ーー『武装探偵社』
それは軍や警察に頼らないような危険な依頼を専門にする探偵集団。
昼の世界と夜の世界、その間を取り仕切る薄暮の武装集団。
なんでも、『武装探偵社』の社員は多くが異能を持つ『能力者』と聞くがーー
「それで…探偵のお三方は今日のお仕事は」
「虎探しだ」
敦君が遠慮気味に尋ねて来たのをぶっきら棒に国木田君が答える。
だが、敦君は虎探しと聞いて少し動揺を見せた。
「近頃、街を荒らしている『人食い虎』だよ。倉庫を荒らしたり、畑の作物を食ったり好き放題さ」
「最近この近くでも目撃情報があったよねぇ」
ガタンッー
隣にいた敦君が椅子をひっくり返す程退いていた。
「ぼ、僕はこれで失礼します」
そそくさと退散しようとする敦君の首根っこを国木田君が捕らえた。
「待て。貴様、『人食い虎』を知っているのか?」
「あいつは僕を狙ってる!殺されかけたんだ!この辺に出たんなら早く逃げないとーー」
国木田君は逃げようとする敦君を、綺麗に腕に関節技を決めて床に倒した。
「云っただろ。武装探偵社は荒事専門だと。
茶漬け代は腕一本か、若しくは凡て話すかだな」
その様子を見て私も立ち上がろうとした時、治ちゃんが制止した。
治ちゃんは私に席に戻るよう目で促し、国木田君の方へ行った。
「まぁまぁ、国木田君。君がやると情報収集が尋問になる。
社長に何時も云われてるじゃないか」
国木田君は大人しく敦君を解放した。
「それで?」
治ちゃんは笑顔で敦君に尋ねた。
敦君も観念したように事情を話し始めた。
私は敦君の話を聞きながら、茶漬けを完食した。