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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第6章 虎の少年


● ● ●



ガツガツと茶漬けを頬張る敦君の横で、私は呆れ顔で見つめていた。

(何杯食べるのよ。この子)

「おい太宰。早く仕事に戻るぞ」

私の向かい側に座る国木田君が大切な手帖をめくりながら言った。

「国木田君は予定表が好きだねぇ」

無関心な顔で治ちゃんが答える。国木田君は手帖を閉じ、机に勢いよく置いた。

「これは予定表では無い!理想だ!我が人生の道標だ。
そしてここには『仕事の相方が自殺嗜癖』とは書いてない」

その後口に食べ物を含み乍話し、何を言っているか理解出来ない敦君と国木田君の会話があった。

「…二人とも如何して会話出来るの?」

その光景に私は呆れ顔で呟いた。
そんな事をしていても、丼が山になる程の茶漬けを平らげていた。

「はー食った!もう茶漬けは十年は見たくない!」

満足そうにお腹を撫でる敦君。

「済みませーん。私も茶漬け下さーい」

余りにも美味しそうに茶漬けを食べる敦君を見ていると、お腹が空いてしまった。

「葉琉、お前まで…」

国木田君が頭を抱える。

「ほら、腹が減ってはなんとやらと言うでしょ?
それに、自分の分は自分で払うよ。
あ、有難う御座います」

そう言って運ばれて来た茶漬けを頬張り始めた。

「え!?国木田君、葉琉にお金を払わせるのかい!?」

信じられなーいと治ちゃんが大袈裟に驚く素振りを見せる。

「五月蝿い、太宰。おい葉琉、伝票此処に入れておけ」

「有難う!国木田君」

国木田君は苛立ちを見せながら眼鏡の位置を指で直した。

「ほんっとーに助かりました!孤児院を追い出され食べるものも、寝るところもなく……あわや斃死かと」

「ふうん。君、施設の出かい?」

敦が切り出した話に治ちゃんが尋ねた。

「……追い出されたのです。経営不振だとか、事業縮小だとかで」

「それは薄情な施設もあったものだね」

「おい、太宰。俺達は恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家じゃない。仕事に戻るぞ」

国木田君の言葉に、次は敦君が反応を示す。

「お三方は…何の仕事を?」

「なぁに、探偵さ」

「探偵と云っても、猫探しや不貞調査ではない。斬った張ったの荒事が領分だ」

「敦君、異能力集団『武装探偵社』って知らない?」
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