• テキストサイズ

明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第15章 DEAD APPLE


芥川の気配が消えて間もなく、敦は別の気配を感じ視線を向ける。感じるのは人の気配と血の臭い。はっと何かに気付き敦は駆け出す。鏡花も人影に気付き敦の後を追った。

「葉琉さん!」

敦の視界には血塗れな瓜二つの姉を抱える葉琉の姿を捉えていた。敦は葉琉の肩を支え、鏡花は葉琉の姉、葉月を支える。葉琉は敦にしがみ付き乍「お願い…お願い……」と繰り返した。

「敦くん、お願い。治ちゃんを探して!このままじゃ葉月が…お願い…!」

葉琉の手に力はなく、しがみついているというより敦に支えられている形だ。震える手で力なく藻掻こうとする葉琉を落ち着かせようと支える手に力を入れる瞬間、ふわりと葉琉との間に腕を入れて葉琉を抱きしめる形で支えた者がいた。

「太宰さん…!」

敦の声で葉琉はハッと見上げる。そこにはいま葉琉が1番求めていた人物、太宰治の姿があった。言葉を発しようとした葉琉の唇に指を置き、困ったように微笑む。

「遅くなって済まない」

太宰は鏡花に抱えられている葉月に視線を向ける。葉琉を座らせ敦に任せて、葉月の元へ向かった。

「これが結果だよ。これが君の限界だ」

そう告げるとそっと葉月の頬に触れる。溢れていた冷気が収まっていき、体温も上がり始めた。しかし、まだ終わりではない。太宰は座って様子を伺っていた葉琉を呼び、漂泊者を遣って欲しいと告げる。

「無理だよ!あの技は葉月と一緒に…」

「葉月ちゃんは1人で発動させなかったかい?」

太宰の言葉で思い出した様に頷き、葉琉は葉月の手を握る。太宰は鏡花に離れるよう促し、鏡花は葉月を横にして少し離れた。太宰が葉月から手を離し、葉琉に視線で合図を送った。
/ 283ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp