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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第15章 DEAD APPLE


「葉月!何でこんな無茶を!そもそも……!」

凍りついた時間の中で、葉琉は自分の異変に気付く。いつもは多かれ少なかれ、流れ込んでくる葉月の力が全く感じられない。それどころか、吸収されている感覚に陥っていた。

「葉月、何したの?」

驚く葉琉に、葉月は微笑む。

「太宰さんには無茶だと言われたわ。でも、試してみたかったの」

徐々に失う力を感じ、葉琉は慌てて手を放そうとする。しかし、葉月は放してくれない。

「終わったらちゃんと返すから」

「違う!そうじゃない!このままじゃ葉月の躰の負担が…。手だって冷たい……」

握られている葉月の手は、氷のように冷たく、生気を感じられない。危うい事をしているのは葉琉にも判った。

不意に、葉月は葉琉の手を放し、【漂泊者】を解く。
抑えきれない冷気を放つ葉月に、荘子は目を細めて喜んでいた。

「私の贈品、使ってくれたのだね」

何がなんだか判らない。脚に力が入らずへたりと床に座り込む葉琉。葉月は地面を蹴って荘子に詰め寄る。右手には短刀を握りしめて。
左手を前に出すと、氷の塊が撃ち放たれる。それは荘子にあたり、ゆっくりと床に倒れ込む。そのまま地面に押さえつけるように、短刀を荘子の胸に刺した。押し倒した荘子に馬乗りになるように葉月が乗っている。何か話しているようだが、葉琉の耳には届かない。

次第に眠気が襲ってきた。近くに落ちていた硝子の破片を手に取り、握りしめる。まだ眠る訳にはいかない。

葉月の周りに冷気が渦巻き、氷の破片が宙を舞う。

「凍れ!!」

葉月の祈りに似た叫びが響く。冷気の渦が弱くなると、荘子の躰は氷に包まれていた。
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