第15章 DEAD APPLE
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敦は一人、暗闇に覆われた道にいた。先に何が待っているのか判らない。
ーーそれでも。
ぐっと唇を噛み、敦は足を踏み出す。
昔は虎が自分の中にいることが怖かった。おそろしかった。けれど、と、敦は思う。
虎は本当におそろしいだけの存在なのだろうか。
ーーちがう。多分、いや、きっと、おそろしいだけではないのだ。おそろしさも心強さも含めて、虎は僕の中の一部だから。
顔を上げて、暗闇をみる。虎の咆哮が近付いてくる。
「今ならお前の声が良く聞こえるよ。お前の言葉がよく判るよ」
自分の中の虎に呼び掛けて、敦は走り出す。急かすように虎が鳴く。敦の瞳に、光が灯る。
「ーーーー来い、白虎!」
求める敦の手に応えて、虎がその身を躍らせる。皓い月光に猛虎が吼えた。