第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「うわぁあぁぁッ!」
「キャ…!」
リーダーからのプレッシャーで我を失ったのか、子分Cが突然莉菜さんに矛先を向け、短刀を振りかざした。
(しまった、想定外だ。 莉菜さんが危ない!)
「く、」
とっさにテーブル上にあった七味唐辛子入りの小瓶を掴む。
そして…ーー
(シュッ!)
(パコーーーン!!)
子分Cの側頭部目がけて投げつけると小瓶は彼のコメカミに命中、衝撃で中身が飛び散った。
「がっ…! め、目が… 目が見えねぇ! 痛ぇぇ!!」
大量の七味が目に入った子分Cはたちまち悶絶し始める。
「抜かりやがってこの阿呆がッ! 女狙ってどうする!?」
「ひ、ア、アニキ、すんませんっ… ヒィィ!」
重大なミスを犯した子分Cにリーダーが一方的に殴る蹴るの暴行…ーー
(見てられない、まるで弱いもの虐めだ)
少々気の毒に思いながらも その隙に莉菜さんの側へ行き、様子を伺う。
「大丈夫? 七味はかからなかった?」
「…っ、は…い、ありがとう、ございます」
莉菜さんは凶器で襲われた恐怖で固まってしまってる。
これ以上長引かせるのが得策とは言えない、こうなったら煙玉を使って一気に…
と考えを廻らせているとーー
(カタッ)
痛みから復活した子分Aが立ち上がる気配がした。
「さっきはよくもやってくれたな… これでも食らいやがれァアァ!」
「ー!」
子分Aの拳(こぶし)が俺の顔面へと迫って来る。
全体重を乗せた渾身の右ストレート…
これを避ければいよいよ怪しまれるだろうな。
(うーん)
仕方ない、一発だけ貰っておこう。
「やっ、危な…!」
莉菜さんが息を飲んだ瞬間、
(ボグッ!!)
「…ぐは」
左頬に鈍い痛みを感じると同時に口内に血の味が広がる。
俺の身体は派手に吹っ飛んで うつ伏せで床に倒れ込んだ。