第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「刀!? ぶぶぶ、武器を使うなんて卑怯だと思わないの!? 」
短刀を目の当たりにした莉菜さんは震えながらも俺を庇おうと必死だ。
だけど敵に立ち向かう勇気に感心されられる反面、すごく危なっかしくも感じるな。
下手をすれば火に油を注ぎかねない。
「卑怯もくそもねぇ、死ねやぁーー!!」
案の定、子分Cは怯むことなく俺に向かって突進し、斬りつけてきた。
「きゃー 怖いー 助け…… おっと、」
(パラッ)
ギリギリで避けるのは案外難しい。
振り下ろされた切っ先はかわしたものの、頭髪の先を少し斬られてしまった。
「オラオラ、油断してると死んじまうぜ!?」
髪を掠(かす)めたことで気を良くした子分Cは致命傷を負わせようと俺を追いかけて来る。
確かに油断は禁物だ、もっとちゃんと集中しよう。
ーーー
「はぁ… はぁ… 女みてぇにキャーキャー逃げるわりに擦りもしねぇ…! なんでだ……っ」
追われ始めてしばらく後、子分Cが肩で息をしながら動きを止めた。
「さあ… 何でと言われても身体が勝手に」
ー それは俺がちょっとすごい忍者だから ー
気を抜けばポロッと出てしまいそうな本音を何とか飲み込む。
とは言え あまりに完璧に避け続けるとさすがに不審がられてしまうだろう。
そろそろ一般人のフリをするにも限界だ。
どうにか決着をつけなければ…ーー
「コラァッ! 素人相手になぁにチンタラやってんだ! さっさと殺(ヤ)っちまえ!!」
「へ、へいっ…!」
リーダーから怒鳴られ、無理やり呼吸を整えた子分Cは最後の力を振り絞るようにして再び短刀を振り回し始めた。
「おりゃぁあーーッ! おらっ…! おらっ…! っ…!」
子分Cの額から玉のような汗が噴き出す。
このままヒョイヒョイ避けてれば自然とスタミナ切れを起こしそうだけど…
やっぱり刃物だけでも先に取り上げよう、
そう考えていったん間合いをとった矢先。