第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「身の程知らずが… アニキに歯向かったこと、あの世でたっぷり後悔しな!」
ついに一番近くにいた子分Aが拳を振り上げ殴りかかってきた。
「キャーッ!」
叫び声をあげる莉菜さん。
彼女を庇(かば)いつつギリギリまで引き付けて…
ーー今だ。
「う、急に激しい目眩が」
(スッ…)
「なっ! 消えやがっ…… おわっ!?」
殴られる寸前身を屈め、素早く足を引っ掛ける。
(ドンガラガッシャーーーン)
つんのめった子分Aは俺の後ろにあった木製テーブルセットに頭から突っ込んだ。
「痛ってぇ…! くそ、何だ今の…っ」
子分Aは全身を強く打ち、背中を丸めて痛がってる。
めまい作戦大成功…ーー
「だ、大丈夫ですか?」
「はい、何とか」
うずくまったままの俺に莉菜さんが声を掛けてくれた。
君まで騙すみたいで申し訳ないけど…
一般人として勝利するためには偶然を装って反撃するしかない。
右手で額を押さえながら わざとよろめいて立ち上がる。
すると…
「ケッ! 目眩だろうが何だろうが、見逃してやるほどの御人好しはここには居ねぇ… ぬりゃあーーッ」
間を置かず、次に控えていた子分Bが回し蹴りを繰り出してきた。
(でも… 遅い)
謙信様相手に鍛錬を積んだ成果なのか攻撃の何もかもがスローモーションで見える。
「キャーッ!」
強烈な蹴りが入ると思い込み、またもや悲鳴をあげる莉菜さん。
よし、ここは俺も便乗して。
「きゃー」
女性並みに甲高い声をあげながら手近にあった丸椅子を持ち上げ、盾代わりに構えた。
(バキィッッ!!!)
「あぎゃっ!? あ、足がぁぁあ!!」
回し蹴りは見事、丸椅子の座面にヒット。
子分Bはスネを強打してのたうち回る。
「ふぅ、間一髪。あの蹴りが顔に当たらなくて良かった」
「っ、ほんとですね…!ドキドキしました」
莉菜さんと顔を見合わせていると、
「てめぇ、調子に乗ってんじゃねぇぞ」
残った3人目、子分Cが懐から短刀… いわゆる"ドス"を取り出した。