第15章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/後編
「あ」
3枚にスライスされてるはずのカマボコは全て端っこ0.5ミリの薄さで繋がっていた。
「嘘っ、ごめんなさい! ちゃんと切ったつもりが…!」
「いや、練り製品をこんなに際どく繫げるなんてなかなかできる事じゃない。ある種の職人技だ」
思ったことを正直に伝えてからカマボコ3枚をまとめて頬張ると、羞恥で泣きそうだった莉菜さんの表情がパッと明るくなった。
「ほ、ほんとに? そんな風に前向きに言ってもらえたの、初めてかも…!」
落ち込んだかと思えば何気ない一言で元気を取り戻す。
莉菜さんは俺とは違って感情豊かな人らしい。
ーーー
「ご馳走様でした」
きつねうどんを完食し、手を合わせる。
「お粗末さまでした。 じゃあ私、片付けて来ますね! あ、その前にお茶のお代わりを…ーー」
「待って」
「?」
「急にすまない。 個人的に君に聞きたいことがあるんだ」
聞くなら今だ。
席を立ち、厨房へ戻りかけた莉菜さんを引き止めた時ーー
(ガラララッ!!)
突然、店の戸が乱暴に開かれた。
女将さん達が帰って来たにしては少し早いような…
不思議に思って振り返る。
(? 女将さん達じゃない)
入り口にはチンピラ風の若い男が三名、薄ら笑いを浮かべて立っていた。
「おう、邪魔するぜぇ。元気そうだな お嬢ちゃん」
どう見ても客として来たようには思えない男達が無遠慮に店内へ足を踏み入れ、莉菜さんに馴れ馴れしく話しかける。
「っ、あなた達…!」
さっきまでの和やかな雰囲気は一転、莉菜さんの笑顔は瞬時に凍りついた。
この人達は…ー
「君の知り合い?」
「…いえ、知り合いっていうか」
言いにくいみたいだ。
莉菜さんが感じてる不快感と緊張が俺にまで伝わってくる。