第14章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/前編
そこへ一瞬席を外していた政宗さんがお櫃(ひつ)を抱えて戻って来た。
炊きたて御飯の匂いに誘われてヒョイと覗き込むと…
「赤飯ですか。贅沢ですね」
白ご飯かと思いきや中身は赤飯だった。
「ああ、莉菜のために用意しておいた」
…! 政宗さん、それはひょっとして。
「私のためにお赤飯? なんで??」
俺がピンと来たタイミングで莉菜さんが政宗さんに問いかける。
「なんでって昨夜、佐助に女にして貰ったんだろ? だから赤飯で祝ってやる。お前さえ良けりゃ閨事のイロハくらい俺がいくらでも教えてやったんだがな」
「え"っ!!?」
全武将の前でズバンと明言されて顔を真っ赤にする莉菜さん。
「ほう、お転婆小娘がめでたく生娘卒業か。良かったな」
「あんたってほんっ…と、バカみたいに顔に出るよね」
「わぁ、おめでとうございます 莉菜様!!」
三成さんらが言い終えると女中も含めその場にいた全員から拍手と歓声が湧き起こる。
「…〜〜〜っ さ、佐助くん……っ!」
ああ、猛烈に可愛い。
懇願するように助けを求められて胸がキュンとなった。
よし… ここは俺が代わりに。
「えー コホン… 盛大な拍手をありがとうございます。お陰様で滞りなく初めての夜を迎えることができました。俺の胸の奥深くには生涯忘れられない甘酸っぱい青春の1ページが刻まれ」
「そ、そんな真面目に返さなくていいってば!」
挨拶の途中、莉菜さんが首を横に振りながら俺の着物の袖を引っ張る。
しまったな、言葉の選択を間違えたか。
「莉菜さんごめん。助け船を出すつもりが… 後でお詫びのキスさせて」
申し訳ない気持ちで莉菜さんの頬に手を添えると…ー