第14章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/前編
安土城には何度も訪れてるものの、正面から入るのはこれが初めてだ。
城門に到着し信長様への御目通りを願い出ると直ちに見張り兵に取り囲まれた。
「莉菜様、ご無事で何より! お前はこっちへ来い!!」
ひと晩行方不明だった姫が見知らぬ男と手を繋いで戻ってきたんだ、怪しまれるのも無理はない。
身長2メートルはあろうかという大柄で屈強な兵2人に両側から腕を掴まれ、犯罪者さながら天主へ連行される。
「ちょっ、乱暴にするのはやめて下さい!佐助くん!大丈夫!?」
そんな情けない有様な俺を莉菜さんが心配し、横を小走りで着いてくる。
「大丈夫、ほら見て。両腕を抱えられてるお陰で自分の足で歩かなくても天主まで行ける。ある意味すごく楽チンでラッキーだ」
わざとらしく足を空中に浮かせてバタつかせると、
「こらっ!真面目に歩かんか!」
「この悪党め、莉菜様を攫うなど大それた事を…!信長様に首を刎ねられても知らんぞ!!」
すかさず兵から厳重注意を受けた。
完全に誘拐犯扱いだな。
「首をはねる…!? そんなこと絶対にさせませんっ、佐助くんを離して!」
莉菜さんが言い返してくれたけど、兵たちは無言で俺を引きずって行く。
ーーー
階段を登りきり、あっという間に6階の天主に到着した。
兵の一人が豪華絢爛な襖を開けるや否や、信長様の部屋に俺を勢いよく放り入れる。
「おっとっと……… ーーーあ。」
転ばないよう踏みとどまって顔を上げると、そこには安土軍の全武将が居並んでいた。
「こんにちは。お邪魔してます」
織田信長、豊臣秀吉、伊達政宗、明智光秀、徳川家康、石田三成……
歴史に名を残す錚々たるメンバーからの熱い視線に射抜かれるも、まずはフランクに挨拶してみる。