第14章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/前編
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莉菜さんと一夜を共にした翌日。
9月とは言えまだまだ強い日差しが照りつける中、二人で安土城城下に戻って来た。
城はもう目と鼻の先だ。
通りの端で立ち止まり、信長様がいるはずの天主を見上げる。
「結局お昼になっちゃったね」
「ああ。これじゃ朝帰りどころか昼帰りだな」
遅くなった理由は言うまでもない。
案の定抑えがきかず、朝っぱらから莉菜さんを抱いてしまったことが原因だ。(しかも二回も)
行為に慣れてない莉菜さんにとっては負担でしかない… そう頭で分かっていても止められなかった。
「莉菜さん、朝は色々本当にごめん。身体 疲れてない?」
「ふふ、平気だよ!ちょっと眠いけど」
「そうか… 信長様への挨拶が無事すんだら部屋でゆっくり休んで」
「うん!」
初日から立て続けに求めてしまったことに俺自身驚いてる。
どちらかと言うと淡白な方だと思ってたけど、気付けば立派な肉食系男子に変貌を遂げてたらしい。
この分だと今後さらにエスカレートする可能性は極めて高いな。
がっつき過ぎて嫌がられやしないだろうか……
考えながら隣に目を向けると、
「はぁ、ドキドキする」
莉菜さんは伏し目がちで表情を強張らせていた。
「信長様に会うの、かなり緊張してる?」
「かもしれない。もし佐助くんが責められたらと思うと何だか……」
…!
自分より俺のことを気にしてたのか。
「心配いらない。いざという時のためにまきびしも大量に用意しておいた」
「うん…」
「………。そうだ、俺の服装はこれで良かったかな」
「服装?」
「交際を認めてもらうための挨拶に行くんだから清潔感のあるスタンダードな服装をと思ったけど、よく考えたら普段着は町人用のこれしか無くて」
「え、全然いいと思う、佐助くんは何着てもカッコいいよ!」
「ありがとう。君に褒めてもらえるとテンションだだ上がりだ。今さらだけど君もその桜色の着物、すごく似合ってる」
「ほんと? ありが、…っ!?」
(ツッ…ーー)
褒めながら莉菜さんの胸の先…
要するに乳首を人差し指で突いた。