第14章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/前編
「政宗様…」
「ん?」
「佐助様の件、本来ならば私は莉菜様から相談を受けた時点ですぐにでも信長様に御報告しなければならぬ立場… それを今まで隠していたことに対してはどんな御咎めでもお受け致します!ですが莉菜様は… 莉菜様と佐助様のお二人だけは何卒……っ」
万が一を心配し、半ば縋り付くような思いでお願いすると、
「晴、落ち着け。俺の話ちゃんと聞いてたか?誰も何も最初から怒ってなんかいねえし反対もしてねえ」
「し、しかし先ほど秀吉様は佐助様をギタギタのメタメタにする、と…!それに、同郷とはいえ佐助様には近付かぬよう厳しく言われていると莉菜様も随分悩んでおいででした」
「真に受けすぎだ。秀吉は人一倍莉菜に目をかけてたからな。可愛い妹分を奪われる悔しさを佐助に対し恨みつらみ言うことで発散してるところはある。だから気にするな」
「っ!」
政宗様が眼帯に覆われてない方の目を細めて柔らかく微笑み、私の頭にポンと手を置く。
「互いに気に入っちまったなら身分も立場も関係ねえ。周りがどう言おうと… 己の信念を貫くのみだ」
「は、い……」
「とにかく、お前はこれからも今まで通り一番の友人として莉菜を支えてやればいい。部屋に帰ったら他の針子の奴らにももう休むよう言ってやれ。いいな?」
「…し、承知いたしました」
「ふっ、明日が楽しみだ」
「え?」
「お前も早く寝ろよ。お休み」
白湯の入っていた湯呑みをヒョイと持つと、政宗様は部屋から足早に出て行かれた。