第14章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/前編
障子が閉められ、廊下の灯りがほんのり届く程度の薄暗い部屋で政宗様と二人になる。
ドクドクと胸が早鐘を打ち、息が苦しい。
「さて」
(ドン!)
「わっ」
「針子のお前が何故あんな所で盗み聞きをしてたのか… ワケを聞かせてもらおうか」
「…っ」
目を左右に動かして状況を把握する。
どうやら私は政宗様によって壁際に追い詰められ、質問に対する答えを要求されてるらしい。
「い、いえあの、私」
何とか逃れられないか思案するも、後ろの壁に片手を突かれてるせいで身動きが取れない…!
「わたし… 何だ?」
「た、たまたま通りかかって」
「嘘をつくな。正直に言わねえと喰っちまうぞ」
「ヒッ!」
近い!
政宗様の吐息が顔に…!
しかも"喰う"だなんて心臓に悪過ぎるっ!!
はっ、、、
この少々威圧感のある強引な迫られ方は…
もしかして以前女子会の際に莉菜様からお聞きした『壁どん』なるものでは!?
「わわわわわ、私は…っ」
頭が混乱して言葉を続けられずにいると
(クイ)
「っ!?」
今度は顎に、壁に突いた手と逆の手を添えられ顔を上げさせられる。
「俺に見つかった以上、タダで帰れると思うな」
はぁぁぁっ!
『壁どん』からの『顎くい』…!!
顎くいも壁どん同様、いけてる殿方 (※略して"いけめん"と言うそう) にされると女人達は こぞって"胸きゅん"してしまう憧れの行為なんだと、莉菜様が熱弁してらっしゃった…!
「いい子だから大人しく吐け」
「〜〜〜っ」
そ、そんな目で見つめられたら!!
莉菜様どうしましょう、
私、政宗様からまさかこんな、
こんな…ーーー
「も、もう駄目」
「……晴? おい、晴! しっかりしろ!」
ついに腰に力が入らなくなり、その場にへたり込んでしまった。
………
………