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イケメン戦国【秘密の花園】

第14章 食堂のキミ、眼鏡のあなた/前編




朝からお出掛けになった莉菜様が帰ってこない…ーーー

長月も半ばを過ぎたその日の夜、安土城は大騒ぎになっていた。

秀吉様の只ならぬご様子に女中や使用人たちはアタフタと動揺し、それぞれ仕事を終えても寝支度する者は誰もいなかった。


そんな混乱の中、私だけは内心落ち着いていた。

莉菜様のいらっしゃる場所に心当たりがあるからだ。


(莉菜様はきっと、佐助様と……)


お二人の関係は私しか知らない。

周囲に悟られぬよう、針子仲間に紛れて狼狽えるフリを続けた。


ーーー


しばらくしてふと疑問が頭をよぎる。

騒ぎになってもう半刻は経つのに、いまだに誰も莉菜様を探しに出る気配が無いのだ。

莉菜様はここ安土城で特別大切にされている姫様、

信長様や秀吉様が捜索のご指示を出されないなんてあり得ない……

なぜ。どうして。

性格上、気になりだしたら止まらない。

理由を探りたくなった私は先ほどから廊下をウロウロしてらっしゃる秀吉様を尾行することにした。


ーーー


静かに後を追うと秀吉様と家康様が立ち話をされている場に遭遇した。

柱の陰に潜んで聞き耳をたてる。


「もう亥刻(※夜十時)か… 佐助の奴、今日はついに莉菜を帰さないつもりだな」

「でしょうね。だとしても連絡くらい寄越せばいいのに」

「全くだ。自分の立場もわきまえず、嫁入り前の… しかも信長様気に入りの娘に手を出すとは。あの男、もし目の前に現れたらギタギタのメタメタにしてやる!」


…! 佐助…?

いま秀吉様は確かにそう仰った。

もしや皆様、莉菜様が佐助様と恋仲であることに既に感付いてらっしゃるの…!?

驚きのあまり一歩後ずさる。

すると、


(トン)


「!」


背中が誰かにぶつかり、瞬間的に身体が硬直する。


「こら」


聞き覚えのある殿方の声。

悲鳴をあげぬよう気をつけながらゆっくりと振り向くと…ーー


「晴、ここで何してる」

「…っ!!! ままままま政宗様…っ」

「しー… ひとまずこっち来い」


静かに… と、人差し指を私の唇に当てる政宗様。

言われるがまま近くの空き部屋に入った。


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