第13章 今夜は朝まで離さない/後編/R18
「ん〜、空気が美味しいね」
「ああ、俺も思ってた。…莉菜さん、ちょっと ここに座ってくれる?」
家の前にある木の切り株に 莉菜さんを座らせ、
「少しそのままで居て」
そうお願いしてからチチチ、と舌を鳴らす。
すると程なくして、
「キュルキュル… きぃ!」
すぐ近くの木の枝に、一匹のリスが現れた。
「……っ、リス!? リスだ!!」
莉菜さんが、切り株に座ったまま目を輝かせる。
「おいで」
「きぃっ!」
枝の方に手を伸ばすとリスは躊躇いなく俺の手に移り、
最終的に肩まで来て落ち着くと、頬っぺたをモゴモゴ動かし始めた。
「可愛い…!随分 佐助くんに慣れてるね」
「俺のペットなんだ」
「えっ、えーーーっ!?」
「名前は"クナイ"。以後お見知り置きを」
「キャー!」
切り株から立ち上がって喜ぶ莉菜さんにクナイを渡す。
クナイは莉菜さんの腕から肩、さらに反対側の腕を行ったり来たりして遊び始めた。
「ふふふ♡可愛いね、クナイ」
「きぃ!」
莉菜さんとクナイが戯れる姿に心が和む。
幸せな光景だ。
この幸せを守るためにも、いま一度 褌を締め直そう。
二人の姿を目に焼き付けようと何気なく一歩後ろに下がると…
急に靴裏の感触が変わり、足元を見る。
あれ。
この1区画だけ、根こそぎ草が抜かれてる。
!!
もしかすると、さっきのお浸しは……ーーー
………いや、
朝食のお浸しが雑草でも俺は一向に構わない。
この時代では食材集めも大変だ。
莉菜さんなりに懸命にメニューを考えてくれたのかと思うと、目頭が熱くなった。